THE 4TH KIND フォース・カインド

アラスカ州ノーム。何者かに夫を殺害された心理学者のタイラー博士は、夫の遺志を継ぐべくこの町特有の原因不明の不眠に苦しむ住民たちのカウンセリングに当たる。患者たちが一様に同じ症例を訴えることを不審に感じた彼女だったが、ある患者が謎の言語を発するとともに妻子を殺して自殺してしまい…。


公式サイトやWikiでだいぶネタバレしていますが、事前情報なしで楽しみたいの! ってなかたの目に触れるといけませんのでたたみます。
ドキュメンタリーを装っているけれど、実際のところはモキュメンタリー。ノームであんな事件は起こっていないし、タイラー博士なる人物も実在していない。*1
超常現象の正体はというと、ようするにXファイル
向こうの人たちが大好きなアレ。私も好きだけど。まあタイトルの「フォース・カインド」自体、UFOとの接近遭遇を四段階に分けた際の「第四種」を指しているので、わかる人には内容を見なくともわかっちゃうだろう。
第一種=目撃、第二種=痕跡、第三種=接触…ときて、第四種はずばり拉致。どうやらノームの人々は夜な夜な宇宙人に見張られ、あげくアブダクションされているらしく、その事実を突きとめようとするタイラー博士もまた“彼ら”の標的にされ…という話だ。


私は観る前にUFOネタと知ってしまって、またそれかーとかなりテンションが下がったんだけど、予想外におもしろかった。なかなか緊迫感と臨場感があって引き込まれる。無駄に正体を引っ張らないところがいいし(中盤くらいで明らかになる)、これで幽霊とか精神的なものが正体だったとしたら、逆にがっかりしていただろう。
UFOとか出てきた時点で現実味がなくなって、興ざめする人もいるかもしれない。でもこの映画の主題は、「信じるかどうかは、あなたしだい」。
それは使用されている過去の記録映像や音声が本物だと信じ込むことではなくて、それ自体は虚構だとしても、このような出来事が世界のどこかでは本当に起こっているのかもしれない、とこの現象を受け入れるか否かということだ。
作中でもタイラー博士が言っていたが、それを受け入れることはとても恐ろしいことだし難しい。あるのかも…と考えると、それがいつ自分の身に降りかかってもおかしくはないわけで、そういう意味での恐怖がこの映画にはある。


タイラー博士は夫が何者かにナイフで刺殺されたと訴えていたが、私はてっきり真実に近づきすぎたあまり、Xファイルでいうところのシンジケート的な裏政府に抹殺されたのかと思っていた。けれど実際には銃での自殺だったことが明らかになる。それは警察官の口から語られるのだが、それが真実だという証拠はどこにもない。
一家無理心中した男性のように、“彼ら”との接触により発狂してしまったのだろうか。そして“彼ら”は目撃者であるタイラー博士の記憶を改ざんした? でももしかしたら警察側が嘘をついているのかもしれない。なにせ娘が連れ去れるところを目撃し、映像まで残っているのにもかかわらずまったく取り合わなかったくらいだ。
…とか、そんなふうに考察もどきでも楽しめる。『放送禁止』シリーズが好きなかたはぜひ。特に一作目が好きなかたはぜひぜひ。
まあそれはともかく、一番怖いのは“実物の”タイラー博士の顔なんですけどね。
★★★

*1:いないよね?