イングロリアス・バスターズ

1941年、ナチス占領下のフランスの田舎町で、家族を虐殺されたユダヤ人のショシャナはランダ大佐の追跡を逃れる。一方、“イングロリアス・バスターズ”と呼ばれるレイン中尉率いる連合軍の極秘部隊は、次々とナチス兵を血祭りにあげていた。やがて彼らはパリでの作戦を実行に移す。


いろんな意味でひどい映画だった。これじゃあパッキリ賛否が分かれて当然だなあ。私はけっこう好きだし楽しめたけど。
虐殺から生き残ったユダヤ人女性の復讐劇と、片っ端からナチをぶちのめして頭の皮をはいでく文字通り“糞野郎ども”の、ヒトラー含むゲシュタポ一網打尽作戦が同時進行。全5章からなっていて、そのほとんどが会話劇。異様に緊迫感があって意味ありげな会話が続くんだけど、でもちゃんと最後の伏線になっていて、最終的にはすべてがひとつに収集される。
その中でも“ユダヤ・ハンター”ことハンス・ランダ大佐を演じるクリストフ・ヴァルツがすごい。スマートでエレガントなんだけど、狡猾で残忍。冒頭でのユダヤ人一家をかくまう男との遠回しな尋問ですでに手に汗握らされ、ショシャナと再会したレストランでの会話には本当にハラハラさせられた。
ランダ大佐は出てこないけど、ナチが集まる居酒屋で、身分を偽っての作戦会議もスリルがあった。見破られた理由もなるほどね〜というもの。
主演?のブラピはほとんどギャグで、物語の息抜き的存在。イタリア語大作戦とかマジあほすぎて笑えてしまう。英・独・仏・伊の言語ネタも細かくておもしろい。
突然ストーリーの流れをぶった切って、「説明しよう!」的に回想が挿入されたり、余韻も何もなく次のシーンへ移ったりする型破りな演出がタランティーノらしいというか。…とかなんとか言ってみたけどごめん私そんなにタラちゃん詳しくなかった。
グロいグロいと評判だったけど、思っていたほどではなかった。ただ映像を直で見せてるだけで、故意にグロくしているわけではなし。でも銃創に指ずぼーはあがががが。


誰もが一度は考えたであろう、あの時誰かがヒトラーの息の根を止めていたら…をタランティーノ流に描いてみた作品、なのかなあ。
復讐を遂げたかつての少女も、多くの敵兵を殺して讃えられることに疑問を抱きはじめた青年も、子供が生まれて父親になったことを喜ぶ青年も、美しい女優も、もちろんヒトラーも、あっさり殺されて死んでいってしまう。で、生き残ったのは頭のいかれた連中たち。
…………。
それはそれとして、ふたつの物語がひとつに繋がるラストは大団円ならぬ大炎上。復讐劇に決着をつける方法があれとは、タラちゃんは本当に映画大好きだな!
(余談ですが昔の映写シーンがあってたいへん興味深かった)
★★★